平野啓一郎「クロニクル」(『新潮』2006年3月号)

 父Pと子Jについての一側面が、Pに関わった女性とJに関わった女性の口からそれぞれ語られる。女性の語り口調から聞き手がいることがわかるけれども、女性の反応からしか聞き手の存在というのは感じられない、そんな文章となってる。
 別に平野啓一郎のファンじゃない人は読んでも面白くないんじゃないかと。結局、物語があるというよりはその語り口、書き方のほうに軸があると思うんで。まぁ、もっとちゃんと読み込めば、父についてと子についての反復的なものとかずれとかが見えてくるのかもしれないけど。
 他の文芸雑誌もパラパラと読んだけど、どれも対談とかインタビューが充実していると感じた。『群像』には平野啓一郎青山真治の対談があるんだけど、これもそこそこ面白かった。高齢の二人、古井由吉蓮実重彦の対談も興味深く読みました。
 『文學界』に掲載されている青来有一「貝」と小野正嗣「森のお菓子屋」はとりあえず読む予定。