佐藤弘「拍手と手拍子」(『新潮』11月号)

 とりあえずの感想。
 男女関係、セックス、あるいは「僕」の周りの風景、音、それへの感覚などを「僕」の視点・思考から書かれている小説。大学生の「僕」と友人、恋人などとの関係のなかで、そのような思考を連ねている。「僕」がやたらとモテるのは村上春樹の作品でもそういう感じではあるし、「僕」の視点で触れたことに関してあれこれと考察を加えるのは保坂和志の作品でも同じだし、まぁ、そういう先行作品を踏まえつつ書いているといえるんだろう。
 重視されているのはセックスだとか音だとか拍手だとかの身体感覚で、その捉え方は小説の思考らしくひとつのことに収斂しないんだけれども、ああそういうこともあるなぁとこちらに思考を促す力はあるんじゃないかと思う。
 セックスに関わる部分が結構多くて、題名の拍手を中心として読んだほうがいいのか悩むところではある。