2005-05-26から1日間の記事一覧

川端康成「死体紹介人」(浅田次郎編『見上げれば 星は天に満ちて』文春文庫ISBN:4167646056)

意外とふつうの話。英和辞書に書かれたアンダーラインのくだりから始まるのが粋かも。あとはそこかしこにユーモアやへんな見方があるのが面白い。 若い娘の贋骨にすると聞きながら、医者の妻らしく笑って、 「ちょいと待つてね。そのまま焼いちや勿体ないわ…

芥川龍之介「疑惑」(浅田次郎編『見上げれば 星は天に満ちて』文春文庫ISBN:4167646056)

グイグイと物語に引っ張られていく快感。 私は何時もの通りランプの前にあぐらをかいて、漫然と書見に耽ってゐると、突然次の間との境の襖が不気味な程静に明いた。 部屋の中には、唯、ランプの油を吸ひ上げる音がした。それから机の上に載せた私の懐中時計…