稲葉振一郎『「資本」論』

「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)

「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)

 一応、読み終わりました。まとめは昨日のクリッピングid:warmheart:20050923)で済んでるんでしません。とりとめもないメモです。
 「セーフティーネット論の鍛えなおし」ってあとがきにも書いてあるんで、それを念頭にして読むとなるほどね、という感じはした。ただ、法律学や経済学と関連付けながらも、社会思想からの見方というのが強い気がする。国家との労働者との関係とかはまさにそうだし。
 労働=人的資本の所有権という擬制は可能なのかもしれないけど、いやおうなく資本主義、経済原理の中ではその人的資本(所有権に対してでもいいだろうけど)は貨幣価値として評価されていくんだろうと思う。権利上は平等であっても、国家に対してセーフティネットを要求できるにしても、いわゆる経済格差に対しての不満は生まれるんだろうと。まぁ、だから、現実的にはそのセーフティネットをどの程度のレベルにするかどうかによって、擬制されている所有権というものの価値が大きく変わるんじゃないか。
 貨幣の発生については端折られていたけど、結構重要だと思う。貨幣以前と貨幣以後というのは大きな断絶があるんだから。コンベンションがあるかどうかでもあるだろうし、資本主義ってのは貨幣の存在によって成り立っているともいえるし。