絲山秋子「沖で待つ」(『文學界』9月号)

 太っちゃんとの思い出が語られるわけだけど、地の語り口(です、ます調)が効果的だったり、しゃっくりの感じが文としてきちんと出ていて、それだけでもいい。でも、やっぱり太っちゃんとの最後の会話(幽霊?との会話)を読むと、じわじわと感動が沸いてくる。
 『新潮』での対談で触れられていた小説内での詩というのを実践している。松浦寿輝の作品のように、詩から喚起される物語を生み出すというようなことではないんだけど、太っちゃんのキャラがその詩によっても表現されていて、結構効果的。