青木淳悟『四十日と四十夜のメルヘン』(新潮社ISBN:4104741019)

 一部で話題になった(?)青木淳悟の作品を読んでみた。新潮新人賞受賞作「四十日と四十夜のメルヘン」と「クレーターのほとりで」。
 へんな小説だと思う。もちろん褒め言葉だけど。賞賛するのが上手な高橋源一郎の書評http://book.asahi.com/review/TKY200504260224.htmlにあるように、あらすじをまとめるのが困難であり、あらすじをまとめるほどのストーリーがないというへんな小説でもある。直木賞系のようなストーリーがあって感動があって、あるいは気の利いた言葉があってというような小説とは違って、言葉によって何が出来るかに挑戦しているかのように感じられる。とくに「クレーターのほとりで」は言葉によって神話的な世界を構築し、その上に近未来的な世界を重ね、独特な世界を作り出している。世界を構築したという点だけでも評価できるんじゃないかと。そして、糞尿まみれになったり、小づくりなクマ(Teddy bear)の亡骸があったりとか、いろいろなユーモアが詰まっている言葉の世界をグイグイと読ませる力量を評価していいんだと思う。

ごく大雑把に言ってしまえば、前半部分は神話的な(身体的)「深さ」があり、後半部分には言語的、ダイヤグラム的な表層的(意味的)「複雑さ」があるのだと言えると思う。そして、そのどちらか一方だけではなく、両者が重ねられ、繋ぎ合わされているところに、この小説のリアリティがあるのだと思える。(偽日記04/09/17(金)・04/09/18(土)http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/nise.a.1.6.html