平野啓一郎「やがて光源のない澄んだ乱反射の表で……/『TSUNAMI』のための32点の絵のない挿絵」「異邦人#6−4」「母と子」(『新潮』2005年7月号)

 平野啓一郎の実験的な作品群。実験的としか言いようがなく、戸惑うばかりだ。
 「やがて光源の…/…」は小説と詩のような断片の連なりとを読んでいると共鳴するようなものがあるし、独立しているようにも感じられる。「異邦人#6−4」はふつうの短編として理解は可能だろう。「母と子」は読む行為自体が面白いし、行ったり来たりすること、小説の内容の重複とズレを感じることを通じてなにか感じるものがある。
 とにかく、作品を読むことで何かを感じられるという点で面白いけど、戸惑いのほうが大きい。個人的には平野啓一郎の作品は好きなんでとりあえず肯定的ではあるんですが、どう肯定あるいは擁護すればいいのかが未だわからず。「フェカンにて」はオーソドックスではあったので面白かったのになぁと思うんですが。