丸山健二「バス停」+中沢けい「入江を越えて」+田中康夫「昔みたい」+宮本輝「暑い道」+北杜夫「神河内」+金井美恵子「水の色」(講談社文芸文庫編『戦後短編小説再発見1・青春の光と影』ISBN:4061982613)

 丸山健二「バス停」。田舎に帰省した都会で働く女性が、バス停であれこれと…。都会と田舎の間での揺れ。
 中沢けい「入江を越えて」。少女の心の揺れ。それと性。
 田中康夫「昔みたい」。結婚を控えた女性の心の揺れ。青春を終えるか終えないかの微妙な揺れ(?)。
 宮本輝「暑い道」。男たちの性と友情。ふつうではあるけど、暑い道という場所、<山本食堂>という場所がいい。
 北杜夫「神河内」。死への恐れと自然に対する感動の対比。山のなかでの内省。内省的、精神的な青春。
 金井美恵子「水の色」。技巧的というかまさに金井美恵子といった文章。金井美恵子の場合、長編のほうが向いているかも。

 青春小説は他にもたくさん良いものがあるんで、この短編集には物足りなさを感じた。だけど、短編集の効用として、触れてなかった作家の作品を読むきっけかになるということがあるんで、その部分では満足。