島田雅彦『美しい魂』(新潮社ISBN:4103622059)

 ゆっくり読んでいたら、装幀の画を気に入り、内容よりも装画のほうが勝っているのではないかとすら…。まぁ、内容も負けてなくて、カヲルと不二子の恋話は面白かったです。でも、泣けなかった。恋話の中にいろいろと含まれているけど、恋話として楽しめばひとまず良いんじゃないかと。
 あえてこういうわかりやすい話を書いたんだろうなぁ、随所に島田雅彦らしさはあったけど。島田雅彦の小説ってなんていうかとことん感情移入して読めない感じがあるのと、それは島田雅彦のシニカルさが見えてきちゃうからなのかもしれないけど、読後にああ、面白かった、という感じがあるようでない感じを受けちゃうんだよね。こういうのは損。とくにこの本は刊行の際のあれこれが話題として大きかった分、もっと損。

しかし、歴史というものは、後世の人間に語り継がれなければならないし、あったことをなかったことにしてはならないので、君もこのことを知っておく必要がある。

美しい魂

美しい魂