中西寛『国際政治とは何か』(中公新書ISBN:4121016866)

 国際政治のお話。そりゃそうだ。主権国家体制、国際共同体、世界市民主義の三つの構造が重なり合ったものとして国際政治を捉える。国際政治の来歴を振り返った後に、安全保障、政治経済、価値意識の三つの位相において三つの構造がどう現れてくるのかを見るという内容。最後に著者は主権国家体制というものを重視するとい点で自らを保守とし、また、外交においての「人間的なもの」や「寛容」を信じるという立場を示している。
 三つの位相に関しての話は基本的に類書とほとんど同じ気がする。流し読みしただけだけど。国家間のネットワークだとか主権国家以外のアクターの登場だとかグローバル化だとか。そういった状況の中であっても、主権国家というものがまだ重要であるということを主張しているのが違いなのかな。田中明彦の場合は、国際政治を世界システムとして捉えている分、主権国家に拘っているということはないのかもしれない。でも、第三圏域に当てはまる国が限られている中では、第二圏域との関係上、やはり主権国家というものは重要視されているんじゃないかと。まぁ、主権国家の枠に嵌らないネットワークも重要視しているといえばしているけど。
 いずれにしても、現実を見る限り、主権国家体制は無視できないわけだし、ネットワーク部分も無視できないわけだし。比重をどっちに置くのかは個人差があるだろうけど、基本的には同じってことかな、と。

 「寛容」というワードはしばしば大江健三郎も使うなぁと。渡辺一夫を経由してなんだろうけど。もちろん大事だろうけど、現実的に考えるとそういう明確でないものはプラスアルファ部分なんだろうなぁと。