田中明彦『新しい中世−相互依存深まる世界システム』(日経ビジネス人文庫ISBN:4532191734)

 冷戦とポスト冷戦、アメリカの覇権とポスト覇権。それらの変化の間に進む相互依存とその制度化。そんな二十世紀後半の世界システムのあり方を見ながら、著者は相互依存を中心的なものとして現在の世界システムを捉えようとする。その概念として「新しい中世」を挙げ、それへの移行過程が現在だとしている。そして、政治体制と経済体制の軸で世界を三つの圏域にわけて、第一圏域(新中世圏)、第二圏域(近代圏)、第三圏域(混沌圏)として、それぞれの圏域の特徴や相互関係を示している。

 現在をどのように見るかを分析的に示し理論化を試みているんだけど、結局は冷戦後の影響、覇権衰退の影響、相互依存の影響という三つの主要な影響とその他個別のファクターを総合的に分析するわけで理論化としては弱いんじゃないだろうか。まぁ、或る程度図式化しないとすっきりしないんだろうけど。でも、総合的分析として割り切って見れば、まっとうなことを言っているのではないかと思う。内容は抽象的ではあるんだけど、頭の中に簡単な見取り図はできるのでよしとしよう。

 マクロ的な流れやあり方の見取り図をもったわけで、個別具体的な話はきちんと自ら情報を追うしかないか。これが一番大変。