大江健三郎『人生の親戚』

人生の親戚 (新潮文庫)

人生の親戚 (新潮文庫)

 悲しみにあふれているんだけれども、大江らしくユーモアもあるし、とにかく生きることに励ましを与えてくれる小説。そして、他者を理解することの困難さをも示しえていると思う。
 初期の荒々しさ、ロックで言う初期衝動的なものが現れている作品群(要するに大江の初期作品群)がやっぱり好きなんだけれども(それは僕自身の年齢と関係があるのかもしれないが)、この中期(また後期)における宗教的な発想(祈るとかそういうこと)や共生というものもやっぱり訴えてくるものがあるなぁと思った。