植田和男『ゼロ金利との闘い』
- 作者: 植田和男
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 単行本
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内容は、金融政策に関わる理論の整理、それと日本銀行がとってきた政策の整理、さらにはその政策がどういう効果をもたらしたのかということを実証分析した論文を噛み砕いたものといったところ。いわゆる「構造問題」ってのも触れてたか。あとがきには出口戦略について触れているが、これは結構常識的な内容。
とりあえず、ここ5年の金融政策に関する頭の整理はでき買って損はなかった。
力点が置かれているのは、ゼロ金利政策や量的緩和政策がどういう効果をもたらしたかという実証の話で、暫定的な結果としては「時間軸効果」(コミットメントによる中長期の金利低下)が見られたこと、それと短期金融市場においてのリスク・プレミアムが減少したということ。
あとは事実として、総需要喚起効果が見られなかったことやデフレ克服を達成できたといえないことも書いてある。なぜデフレ克服ができなかったのか。そのひとつとして金融セクターの問題を出してきている。この内容もありきたりではあったけど。
出口戦略としては、いままでの金融政策の効果を考えれば、ビハインド・ザ・カーヴでいいんじゃない?ってことで、あとはコミットメントに関わる部分で動学的不整合性が生じる面があるけど忍耐ってことじゃないかと。
元審議委員としては日銀批判を堂々とすることは当然出来ないんで、学者として書いている面が強いんだけど、いずれにしてもここら辺の実証分析はまだまだ蓄積不足だなぁということでしょう。