渋谷博史『レーガン財政の研究』ISBN:4130401254

 昔読んだ本を引っ張り出して読み直す。日本の財政赤字の問題、年金問題を頭に置きながら読んでいると結構面白い。
 アメリカにおける福祉国家の再編の動きを描いている。財政再建、税制改革、国債管理、そして社会保障改革を通じて、福祉国家のあり方を模索している姿を描いている。
 福祉の論理と納税者の論理のバランスによって福祉(社会保障)の規模、政府の規模が決まってくるというのがベースにある。で、それを最終的に決めるのはまさに政治であり、公聴会の記録などを調べて政治決定過程を明らかにしようとしている。歴史的な意義はそういう錯綜した政治過程の中からベクトルとして生まれてくると考えているようだ。
 あくまで学術書なので価値判断がほとんど含まれてない分析ではある。実際にはレーガン時代に財政再建が終わらなかったわけだし、「パイ」の成長を目指した減税や優遇措置もある意味失敗に終わった(IT革命をもたらした背景という見方もあるようだけど)。だけれども、財政のあり方、国のあり方、福祉国家のあり方を考えていく上でのヒントにはなるなぁと思う。

 福祉の論理と納税者の論理がぶつかりあっているのが今の日本であると思うし、「小さな政府」「大きな政府」とお題目を唱えているだけではダメなのも確か。「パイ」の成長を目指すのもひとつ、財政赤字を理由にコンセンサスを形成し福祉抑制を目指すのもひとつ。年金一元化によって「年金保険」型ではなく「福祉」にするなら医療その他のバランスがあるだろうし、そういうなかからこの国のあり方が見えてくるんだろうなぁ。
 なんだか今度の日曜日の選挙に引きずられがちではあるけど、結局のところそれを選択するのは最後は世論なんだろうと。『レーガン財政の研究』においても、世論の動向がどのように政治過程に影響しているかを分析しようとしているように。

 そんなことより、

を買うか買わないか。なんとなく欲しいんだけど、金ないし…。