古井由吉『杳子・妻隠』

 古井由吉の小説をはじめて読む。はじめて読むと言ったときに初期の頃の作品を読もうと思うのが、僕の癖かもしれない。それで手に入りやすい『杳子・妻隠』を読んでみた。
 「杳子」は、神経を病んだ女性とひきこもり系の男性の人間関係(恋愛?)を描いた話。読んでいてへんな感覚を持つ。それに成功している点でこの小説はすごいんだと思う。へんな関係を通じてふつうの関係や生活がどんなものであるのかを相対的に浮かび上がらせているということになるんだろう。
 「妻隠」は、同棲関係に近い夫婦とその周りをめぐる話。その周りには奇妙なお婆さんとヒロシ君がいる。お婆さんが面白いなぁと思ったのと、夫が風呂場でじーっとしているシーンも良かった。

杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)

杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)