『聖なるものと』湯浅博雄

 バタイユブランショデリダといった人たちの書物をきちんと読んでいれば、この本に述べられている内容はほとんどが既知なんだろうと思う。けれども、それら原書や類書を読んだことのない私には刺激的で面白い内容だった。とくに最後の章、文学の経験について語っている部分。
 なぜいまこの本が書かれねばならないのかという疑問は生じてくる。けれども、教科書用に半分以上は書かれているという気がしてならないのでその疑問はほとんど無意味なのかもしれない。9.11以後の絡みを含めてこういうのを提出したと考えられはするが、純粋に学問・研究として書かれていると考えていいのではないか。むしろそういう社会的なことを考えてしまうのは、この本を読む側の問題なのではないかなぁと思う。